Thursday, May 11, 2006

Wiley - Da 2nd Phaze






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シ ングル単位ではマスには一切受けないような荒ぶり尖った曲が多 いのに、アルバムを製作すると途端にマスにもコアにも受けず目も当てられないような駄作を世に送り出す不思議のシーンのグライム。だからこそ、商業性に譲 歩したくないとの理由からメジャーレーベル3社からのオファーも断り、コアなグライムを広めるため自身のレーベルから世界配給を伺う意気込みまで見せてい たWileyの2ndアルバムには期待せざるを得なかったのだが、いざ発売してみると、
自身のレーベル → 元部下のレーベル(自分もわずかに参加)
世界配給 → 一つのオンラインショップの独占販売(今のところ)
新曲多数 → 過去に発表した曲の寄せ集め
と いうありえないレベルの規模縮小に大鉈を振るう相変わらずの不思議っぷりで戸惑うばかり。アルバムの最後に3曲目でディスっているMore Fire Crewのクラシック"Oi"を配置する自由すぎるパッケージングといい("The Blueprint"のラストがNasの"Half Time"みたいな)、曲よりもシーンそのものがケイオス。

若手のあいだで「あたればでかく、はずすと悲惨なものになる」という己のパー ソナリティーに完璧にマッチする玉石混合のミックスステープアルバムが氾濫す るなか、一定のプロップスを得たシングルばかりを集めたアルバムにしたのは、堂に入ったWileyのパーソナリティーには見合っているが、その高品質な安 定性と引き換えにスリリングさがほとんどないのが難点か。貫禄ある作品ではあるが、ぶっとんだ発想は少ないがために、西のハイフィー、東のグライムという ような印象 が頭をかすめる曲がひしめく中、唯一グライムのオリジナリティーと革新性をすべて馬鹿さにのみ注ぎ込んだかのような"Eski Boy"だけは、あたったときの若手の曲に太刀打ちできる
得体の知れなさと沸 点の高さをあわせもつベテランの妙技。Roll Deepのアルバムを通過したWileyにしか作りえない馬鹿さ全開のこの曲は、どこを切り取ってもポップでありながら商業性とは完全に切り離されてい て、発表時に「コアなグライムを広めたい」と似つかわない意気込みをみせていたのも納得できる間口の広さがある。何かの間違いで一発屋になる可能性がなくはないくらいには。

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