Wednesday, July 04, 2007

Hadouken! - That Boy That Girl






listen here


3年前にLil Jonが「次のアルバムはクランク・ロックだぜ!」と言っていたときは、このおっさんはなにを言ってるんだ、と誰もが思ったことだろうが、今や見渡せばUSにはShop BoyzがいてブラジルからはBonde Do Role、日本にもイルリメ、曲単位でエッセンスとしてロックを入れているものもカウントすればDizzee RascalにTeki Latexと世界中のあらゆる方角からのかつてないロック攻め。どうしてこんなことになってるのかはよくわからないが、恐るべき先見の明である。

最終的にはアート的なところを落としどころとしてヒップホップを色々といじくっていたアンティコンや、そこから派生したナードラップが自身のルーツを自然に振舞うためにロックを取り入れたのに対し、なぜか06年以降にロックを取り入れたヒップホップは気軽な目新しさと快活なキャッチーさばかりを追い求める風潮に。これが流行るのはとても不可解だけども、この風潮にあってヒップホップマップの端の端の裏あたりにロックバンドの体裁を取りつつポツンと位置するHadouken!がこの流れに沿うのも極めて自然だと言える。

求められている空気感をピンポイントで読み取り、ロック×グライムという単純明快だが、ちょっと配合をミスると大失敗をやらかしそうな白人的文化搾取調合に果敢に挑戦。ヴォーカリストの旧名Dr. Venomのガラージ/グライムシーンにおけるトラックメイカーのキャリアを生かし、JMEのフロウをパクり、D'Explicitの音をパクり、奇跡の配合を完璧にこなした結果、なぜかニュー・レイヴだとかに括られ大成功。

しかし、そんな安い職人芸で作られたこの作品には、当然のように鬼気迫る生々しいグライムらしさはない。いまや商業的に成功して流通している「グライム」とは、このHadouken!であり、Dizzeeであり、Lady Sovereignであるけども、こういう「グライム」がラーメンの胡椒程度にしか使われていないカラフルな音楽の影で、バッドマンと呼ばれたいがためだけに人を刺す発砲する頭の悪いキッズで溢れるストリートへの置手紙"Playtime Is Over"を残し引退してしまうWileyの姿がチラリと脳裏を横切る。

No comments: