Tuesday, May 18, 2010

微熱メモ vol.9 - Alley Boy "Definition Of F*ck Sh!t"とKLOOZ "NO GRAVITY"などミックステープその他諸々について




大半のビートを手がけるArkatech Beatzの渋めでメロウなビートがダークな色合いとざらついた叙情性を醸し出し、同じくLil Nealがプロデュースするトーンの低いFuturistic系トラックが抑えられた凶暴さを演出する。どこからともなくあらわれては消えていくミックステープアーティストの中で、いつの間にか"次のミックステープが待たれるラッパー"になっていたAlley Boyと、2010年上半期ベストと名高いミックステープ"Definition Of F*ck Sh!t"について詳しい人は一体どれくらいいるのだろうか? Alley Boyとは一体何者なのか?

Gucci ManeやYoung Droといったアーティストとのコネクションを持っているにせよ無名のAlley Boyがここまで"次のミックステープが待たれる優れたラッパー"となったのには、アトランタから発信される音源に精通しフックアップするブログの力が大きい。毎日のように何曲もアップロードされる音源やPVを追い、何人ものアーティストのミックステープをウォッチするブログの記事は、ほとんど毎日アップローダーやYouTube、Vimeoのリンクで更新され、その情報は物凄い勢いでOlder Postへながれていく。その激しい情報のフローの中でインパクトを残し、頻繁に顔を出すことのできるアーティストこそが"次のミックステープが待たれるラッパー"になる条件だ。

結局のところ、「Alley Boyとは一体何者なのか?」を取り上げるメディアなんか無くても、そしてそんな情報を得る場が無くても、ブロガーが織り成す"情報のフロー"を追い求めるリスナーは次のミックステープを待ち望む。「刺激的な音源を発見してダウンロードをする」ことが目的ならば、アーティストや作品やシーンの動向を掘り下げてナレッジを提供するメディアは必要ない。ただネットを繋いだときに最新の情報がデスクトップにあらわれて、その情報の先に音源がPVがリンクされていればいい。

日本でも海外と同じようにミックステープを無料配布するアーティストがあらわれてきたけども、彼等をリアルタイムでフックアップできている有力なメディアがネットを含めてどこにも存在しない。少なくともKLOOZやAKLOやCHERRY BROWNのミックステープアルバムをリアルタイムで追ってダウンロードしているリスナーの情報元は既存のメディアではない。

彼等のミックステープ情報を得られる場はネット上に限られている。しかも本当にリアルタイムで知りたいのであれば、Twitterを活用している必要がある。いままでは雑誌やウェブの"場の情報"に自らアクセスする必要があったけども、いま何か最新の情報を得たいのならばTLに好き勝手にながれる"情報のフロー"を眺めているのが一番効果的なのは間違いない。

きっといまのミックステープシーンの動向を知らないリスナーはたくさんいるだろうし、KLOOZ、AKLO、CHERRY BROWNといった新世代の面々の名前を知らない人もいるだろう。彼等のニュースは"場の情報"としてではなく、個人個人のTwitterに発信されて、TLの"情報のフロー"の一部から認知されていっている。いままでの"場の情報"よりもかなり小さく限定的なところに流れる"情報のフロー"をとらえることができているか否かが、彼等にアクセスできるかどうかの分かれ目になっている。言うまでも無くそこにアクセスできる人とできない人では、情報の見え方がまったく異なっている。

雑誌やWebZineなどの"場の情報"から、動画や音源のリンクが乱立するブログやTwitterの"情報のフロー"へ。きっとブログやTwitterのフローの速度に従い、シーンへの共通認識もどんどん薄れて拡散していく。なぜなら、いまTwitterで私達が見ている"シーン"のかたちは、自分個人のものでしかないし、自分とまったく同じ情報を享受できている人など本当にごく一部に限られているのだから。



関連ダウンロード

Alley Boy "Definition of Fuck Shit"
http://www.mediafire.com/?jymmtkuymmd

Klooz "No Gravity"
http://klooz.bandcamp.com/

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